久し振りの性感エステでトホホな体験

世界中の秋晴れを全部、東京に持ってきたような見事な小春日和の午後遅く、私は久し振りに羽田空港に降り立っていた。大学の同窓会に出席するためだ。それぞれの分野で責任ある立場になった者、代々続く家業を嫌々ながら継いだ者、未だに何を生活の糧にしているのか分からない者等々、青春時代を共に過ごした悪友たちは十人十色の人生を過ごしてきたと見える。頭に白いものが目立ち始めた輩もいれば、ほとんど髪が残っていない輩もいた。体の線の崩れにも、時の流れを感じぜざるを得なかった。当初の予定通り、新宿西口の世界的なホテルの最上階にある中華料理店で一次会は開かれた。仕事や家族、さらには趣味や病気に至るまで話題は多岐に亘り、皆大声で気焔を上げていた。それから程なくして一次会がお開きになると、参加した半分以上の同窓生が家人を恐れて新宿を後にしてしまった。それでも、酔いが回った残りの輩で、今度は新宿ゴールデン街に繰り出した。嬉しいことに、学生時代に足繁く通った店が、いまだに変わらぬ看板を掲げて営業していた。もう、どんちゃん騒ぎだった。飲めや歌えの大合唱が二時間は続いただろうか。ふと時計を見ると、時刻は既に午前零時を過ぎている。そのことを告げると、先程までの乱痴気騒ぎが嘘のように、最終電車に間に合う輩は脱兎のごとくJR新宿駅へ消えてしまった。店の前で残された悪友二人は、相談することもなく新宿の歌舞伎町へ向かってトボトボ歩き始めた。夜露に塗れた路面のアスファルトが冷たい光を放っている。大ガードレールを通り過ぎると、懐かしいネオンが双眸に飛び込んできた。通りに面した雰囲気は大きく変わっていたが、一歩路地に入ると、赤や青のネオンが明滅し、当時と変わらぬ面影を残していた。千鳥足気味の悪友に肩を貸しながら、ずらりと並ぶ性感エステ店を物色していると、ひと際目立つ看板に目が留まった。黄色の背景に赤文字で「人妻ヘルス○○」と書かれている。怪しい光に誘われるように、店の入っている黒鉛筆を建てたような雑居ビルの二階へエレヴェーターで上がってみると、先程の看板と同じ文字、同じ色で書かれたドアが廊下の一番奥に見えた。酒の勢いもあって、大声を上げながら廊下を進み、ドアを開けると、愛想のいい男性店員が笑顔で私たちを迎えてくれた。色々と熱心に料金システムを説明してくれる若い店員の姿に、ついつい往年の自分を重ねてしまい、後先考えずに最長の百二十分コースを選んでしまった。泥酔していた悪友の分まで料金を支払い、待合室で性感エステ嬢を待っていると、二分も経たないうちに赤いカーテンが半分だけ開けられ、「××さんと△△さんで~す!」という店員の声が聞こえた。三つ指ついて丁寧にお辞儀をしている二人の性感エステ嬢の姿があった。スケスケのランジェリーに包まれた双胸が、いやがうえにも男心を昂揚させてくれた。でも、好事魔多しである。日頃の垢をすっかり流し、意気揚々と引き揚げた我々二人の頂いたプレゼントは、三日後の下半身の痛みだった。何ともトホホな冬の同窓会の思い出話である。

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